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假名遣の歴史
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2009-04-29假名遣の歴史 附録一/附録二

第十一 形容詞の連用形を長音とせることについて

次にオ列長音といへる中にあげたる次の例

あかう(赤)  ちかう(近) ながう(長) あさう(淺)

くさう(臭い) いたう(痛) かたう(堅) つめたう(冷)

あぶなう(危) こはう(強) しはう(吝) あまう(甘)

せまう(狹)  はやう(早) くらう(暗) からう(辛)

あらう(粗)  よわう(弱)

これらはいづれも所謂形容詞の連用形の「く」が音便にて「う」となりたるものなり。かくてそれらの語幹は

あか ちか なが あさ くさ いた かた つめた あぶな こは

しは あま せま はや くら から あら よわ

等なる事實は、日本人として知らざるものあるまじ。而してその連用形が本來「く」にして、その形は

あかく ちかく ながく あさく くさく いたく かたく つめたく

あぶなく こはく しはく あまく せまく はやく くらく からく

あらく よわく

の形にて現に日常使用せられてあるはいふまでも無し。この「く」が音便にて臨時に「う」となることも、理論はさておき、事實は國民周知の事なり。かくてこの「う」が附屬する場合に上の語幹の「ア」韻が「う」の影響を受け、「う」も亦上の影響を受け相反映して「オ」韻の音に近づきてあることも事實なり。かくてこの場合に於ける發音がオ列音の長音となれりとせば、こは發音のまゝに「こお」「そお」といふ如き文字を用ゐるべき筈なり、然るにこゝにはその長音符として「う」を使用せり。この故に調査會案にてはこの「う」も亦音便の「う」をあらはすものにあらずして、長音符としての「う」なればその價値は全く別なりとす。

こゝに於いてか問題生ず。この音便といふものは本來發音上の一時の現象にすぎざるものなり。しかもこれらはたとひ一時の現象たりといへ、「く」の變形なる以上明かに語幹と語尾との關係を有するものなり。今調査會案の如くにせば、その語幹に變化を來すのみならず、語幹の長呼によりて一の活用形をなすことゝならざるべからず。かくてこれと同時に國語の法格の上に重大なる變動を呈するに至らむ。この故に調査會がこれを主張する以上、同時に形容詞の法則の上に如何なる改革を加ふべきかの合理的説明を下さゞるべからず。假名遣を改むと称して語法をやぶりてそのまゝにあるべきにあらざればなり。

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舩木直人(funaoto@hat.hi-ho.ne.jp)